講演録「創業に対する心構えと成功のポイント」第二部
信用
今度は、約束の大切さをお伝えします。約束イコール信用なんです。約束は1回果たせば、わずか1枚の紙の厚さほどの信用になるんです。10回約束ごとを果たすと10枚分たまるんです。100回続けて、約束を果たすと、「あいつは信用できる」ということになる。ところが100回めに約束を破ると、この信用の100が一気に0になります。
約束の中で代表的なのは、時間の約束です。アポイントを取って、お願いに行くのに、どうするかというと、5分前に必ず行く。5分前に行って待っていて、そして約束の時間に入る。商談でお客様と返事や連絡の約束をします。その時、忘れないように必ずメモをする。
サンプルを送って欲しいと言われれば、絶好のチャンスですね。サンプルを送る時に私の場合は、そのお店を出たら、携帯電話で「サンプルを、このお客様に送ってください」と当社の担当者に連絡をします。翌日に届きます。「打てば響く」ような行動がお客様の信用を得ます。忘れた頃、一週間過ぎてからサンプルを送っては上手くいきません。スピード対応でもお客様に感動を呼ぶことができるのです。そのへんの積み重ねが信用の積み上げということになります。
約束を守っていくということで、具体的にこんなことがありました。京都での商談でありますが、その前日に私は、助手席に乗っていて車に衝突されるという交通事故に会い、救急車で病院に担ぎ込まれて額(ひたい)を七針縫いました。商談を控えておりましたので、どうしたかというと、これは行かねばという男の約束であると、私はそういうふうにいつも思うわけです。それで、包帯をグルグルと頭に巻いて若い社員に同行してもらい、新幹線に乗って京都まで商談に行きました。その私の姿を見た、お客様はどう言われたと思います?「こんな時はこなくてよいよ。お宅とはこれから取引します」他に何にも言われませんでした。姿を見ただけでこの人なら大丈夫だと思ったのでしょう。だから事故が起こったから行かないのではない。こんな時こそ絶好のチャンスと思い行動をします。
また、東京都内をセールスで回っている時に、土砂降りの雨でタクシーも動かなくなりました。私は仕方がないので、約束の時間に間に合わせるために、その会社まで歩きました。横なぐりの風雨に、傘が飛んでいってしまうくらいでしたが、目的地に向かいました。着いたら、なんと革靴を脱いだら金魚が泳げるくらい水がいっぱいでした。上から下まで背広はベタベタ、ズクズク。受付でタオル3枚を借りて拭き、そして知らぬ顔をして、商談の場に行きました。お客様は言われました、「こんな雨だからあなたは来ないだろう、と思っていた」。そして、見れば、背広が濡れているのは分かりますから。「何で来たの?」「歩いてきました」。その後の商談は大成功でした。要は、約束を守りたいという気持ちを、必らず天は味方してくれるのです。これは暖簾(のれん:信用)になりました。
信用ということで別の角度で申し上げますと、信用でいちばん大切なことは、相手を儲けさせるということです。もう一つは、約束を守るということ。そして、人に好かれること。「あいつはなんとなく憎めない奴やなー」とか、「可愛いなー」とか。この3つが大切だと故本田宗一郎さんは言っています。私もやはりその通りだと思って皆さんに披露をしました。



