講演録「創業に対する心構えと成功のポイント」第二部
ヒントを貰ったら動く
ヒントを貰ったら動くということも大切です。例えば、創業の頃にうどん屋さんで食事をしている時、写真週刊誌のフライデーを何気なく見ていたら、ページの下の方に「面白い記事があったら、お知らせください」と書いてあったのです。しめたと思い、すぐに食事をして、会社に帰って、フライデーを発刊している講談社に、「池田町からゴキブリが消えたので、ぜひ取材に来てください」と電話をかけました。受ける方は唐突ですからびっくりします。一生懸命話したのですが分かってもらえず、「分からないですか。それでは明日行きます」と言って、当社が新聞で報道された資料を山ほど持って、東京の講談社に一人、乗り込んだのです。そして記者の人に会ってお話をしました。持参した新聞を見て、これは本物だと思ってくれたのです。
それで結果どうなったかというと、これがフライデーの記事なんです(実際の記事を見せて)。当時これだけのものをフライデーの広告に出すと400万円です。これが無料で載りました。広告は価値が少ない。記事は10倍以上の価値があります。どういうことが書いてあるかというと、「ゴキブリ撲滅へ、町をあげて、だんご作戦。岐阜・池田町には一匹もいないのだ」と書いてあるのです。しばらくしたら講談社から10万円の振込みがありました。これは何でしょうかと問い合わせましたら、これは取材協力費だと言われました。こんなことでもお金儲けが出来ます。(笑)
朝日新聞の「声」の欄で、こんなこともありました。これもいい話です。「新幹線には、ゴキブリが数百万匹無料で乗っている」という投書なのです。実に面白い投書です。新幹線に乗ったら、ゴキブリがたくさんいたというのです。それに対して、私はこれは面白いと思ってすぐに投書をしました。「新幹線のゴキブリ、池田町のゴキブリだんごで簡単に退治出来ますよ」。これを、私の名前で書くと企業ですからダメなので、池田町商工会指導員の名前で書きました。それが「声」の欄に載りました。その「声」の欄を見た読者が、池田町のゴキブリだんごで簡単に退治できると、また朝日新聞に投書をしてくれました。3回ほど載ったら、JRが驚き、当社に電話をかけてきました。「新幹線のゴキブリの退治の仕方を教えてください」とお話があったので、「そうですか、すぐ行きます」といって東京の品川の新幹線の車両区へ行きました。新幹線の車両は16両で100編成ぐらいで、たくさんあるように見えますが、あっちへ行ったりこっちへ来たりしてるだけなのです。
一車両は、当社の製品40個で退治出来ますと言いました。一車両40個。そろばんを弾くと、なんと500万円の売り上げになります。JRから取引は「この業者を通じて買いたい」と言われました。この業者は、国鉄時代の子飼いの業者なのです。顔を見ただけで、「この人とだけは取引をしたくない」という顔をしていましたが、がまんをして商談をしていて最後に、この人がこう言いました。「この支払いは手形です」と言うのです。すかさず、私は「実は親の遺言で、手形の取引だけは、してはいけないと言われているのでお断りします」と帰ってしまいました。
JRはどうしても欲しいのです。しばらくして、また「どうしてもこの製品が欲しい」と言ってきました。
それで、JRが業者のここならどうかと言ってきたのが、なんと2000名の社員で売り上げ2000億円の上場企業の東邦薬品㈱という会社でした。こちらは無条件で「お願いします」と言いました。しばらくしたら「新幹線にゴキブリ退治の製品を売りつけた男がいる」と、聞かれた東邦薬品の社長さんが「おもしろい人物と聞いたから、1回会ってみたい。会ってから、取引を決めたい」と言ってこられました。それで私は、東京の東邦薬品㈱の松谷義範さんという社長さんに会いに行きました。
この時、創業期でしたから、この勝負(取引)は、なんとしても勝たねばと。言ってみれば、古いのですが、村田英雄の歌った「王将」の心境です。"明日は、東京に出ていくからは、何が何でも勝たねばならぬ"勝つためにどうするかというと、入念な下調べをします。まず相手を知る、相手をよく知って、そして対するわけです。
それにはいろいろあるのですが、その会社の歴史まで勉強をします。ただ、前日に分かったことは、「この勝負、私は負けた」ということです。なぜ負けたというと、膨大な資料や本を集めて調べました。その中で松谷社長さんは東京大学の西洋哲学科卒で、創業経営者でもあり、43年間で遅刻1回だけとありました。しかも、日本有数の経営者とわかったからです。
この方に私が勝とうと思って勉強したのですが、でも負けたと思うのも、また良いのです。調べた後に負けたのですから、実にリラックスするのです。
松谷社長さんに初めてお会いした時に、私は「実は、薬屋さんとだけとは取引をしたくない」と正直に言いました。なぜ、したくないかというと、代金の支払が手形なのです。そして返品が当たり前なのです。それから、売値もいいかげんで、小売業の中で一番厳しいのが薬屋さんなのです。だからそんなところとは取引したくないと、いきなり言いました。その松谷社長さんは当時、?日本医薬品卸連合会の会長さんだったのですが、その方に向かっての発言ですよ。「君はうちに来てよく言うな」と言われました。そのあと「うちは代金は現金で払う、返品はしない。だから取引してもらえんやろか」と言われました。当時、松谷社長さんは77歳でした。
1年も経たない間に、「うちの会社でゴキブリキャップ事業部を作るから手伝え」と。「ゴキブリキャップ事業部」という名前は、上場企業にとって恥ずかしいと思われたのか「GC事業部」と名づけられました。そして、なんとその年に6000万円の売り上げがありました。
いいですか、はじめから申し上げますと、ハガキ1枚で、「声」の欄を見て面白いと思ってやったこと、それが1年後には6000万円の売り上げになりました。これは、頭のいい人じゃ出来ない。だから皆さんは出来る。今、創業したいという人は頭が悪いよ。「頭のいい人はやらない、こんなつまらんことは」と思います。要は、動くということ、動くということは変化、進展につながります。



