講演録「創業に対する心構えと成功のポイント」第二部
ハガキ
セールスの方法には、訪問する方法と、電話と、ハガキがあります。訪問は、顔と顔を合わせるわけですから、20分か30分間、集中力を持ってやればいいのですが、あまり用もないのに何回も行くと、向こうから「来てくれるな」と言われます。
電話では、私は28歳頃にイビデンの大阪支店で営業をしていました。本社からの指令で、「今日から2割増にしたから、売ってこい」と言われました。私は2割も安いなら簡単に買ってもらえると思って、電話でお客様に「今日から2割サービスだから買ってください」と言いましたら、支店長の目の前で断られました。それを見ていた支店長が、私に「君、電話商売はまだ10年早い」と叱かられました。そのくらい、電話は難しいのです。顔が見えないから。
私が、皆さんにお勧めするのは、ハガキです。得意先を訪問した時、得意先がこちらにおみえになった時、あるいは、得意先の記事が出たとき、得意先に関する情報が出たとき、その都度ハガキを書きます。当社の実例で申し訳ありませんが、営業マンは、1日3枚書くということが会社との約束になっています。「訪問をたくさんしなくていい。とにかく3枚のハガキを書きなさい」。これを10年続けました。1日に3枚書いた結果どうなったかというと、下手な字も上手くなります。下手な文章もよくなりました。ポイントは「プラス言葉」を書くのです。明るい、楽しい、情熱的等の文字が心をプラスにさせます。だから、人間も良くなるのです。
ぜひ、皆さんハガキを書いてください。ハガキに3感を入れるのです。感謝とか感動とか感心の感を入れる。当社のハガキは、私製で、裏面の下部に人生の教訓が書いてあります。文章を上部8行ぐらいで簡単に書けるようにしてあります。
このように書きます。
「毎度ありがとうございます。ご多忙の中、ご面談を賜わりまことにありがとうございました。感謝申し上げます。社員の皆様の挨拶がさわやかで感心を致しました。そして、伊藤様のとてもよいお話にも感動いたしました。伊藤様との再会が一層楽しみになりました。伊藤様の幸せを祈念しつつ・・・。ありがとうございました」
これで、1行余分に書いて9行です。
例えば嫌な仕入担当者に会ったときに、「嫌な仕入担当者様に」とは書けないですね。そこで「情熱家の伊藤様に」と書いたほうがいい、そうすると、「また来いよ」ということになります。
ハガキは、書かせていただくという気持ちで、とにかく褒めて褒めて褒めるのです。3枚ほど続けて書いたら、相手に喜ばれます。ですから、ハガキを書いています。
先日、東京へ行ったとき、当社の大切な得意先ですが、そこの社長が机の中から私の書いた輪ゴムでとめたハガキ20数枚を、ポンと置いてくれたのです。1枚のハガキでは信用はつきません。20数枚のハガキというのは、大きな信用です。もうこれで、この社長とは何を言っても付き合えるという気持ちです。もう少し分かりやすく言うと、得意先の社長が「タニサケさん、儲かっているので、そろそろ値下げやな」と言うと、「あっ社長、今日は実は値上げのお願いに来ました」そうすると、社長は笑ってしまって「お前は、ああ言えばこう言うやつや」といってお互いに大笑いして帰ってくるのです。だから面白いのです。ハガキを書くという平凡なことでも、コツコツとやり続けることによって、非凡になる。非凡とは優れていることです。
みなさんは、大きい成果を求めていますけれど、もし、それがあれば、誰かがやっています。まず、それはないと思います。だから、これから5年とか10年先の目標に向かって、良いことを根気よくやる。偽善でもいい、良いことをやり続けていくことで結果がよくなってきます。悪いことをやっていれば、おのずと悪くなる。悪い結果が生まれる。だから今、鵜の目鷹の目で皆さんは大きいことを探していますが、そういったことはありません。やっぱり地道にコツコツやっているほうが成功に近づきます。
ハガキを、今は商売のことで言いましたが、もっといいことがあるのです。わずか50円の切手で、全国の人達と交流が出来ます。慰めたり、励ましたりもできます。ハガキは下手な方ほど喜ばれるということがあります。下手な文章、下手な文字でいいのです。続けるとしぜんに文字が上手くなります。最初のハガキに2時間かかりました。1枚書くのに、今は4分間です。4分で切手を貼って出せるのです。ハガキは、自分の人生のひとつの武器になりました。



